「え?」
瞬間、ロイドの視界は濃紺に埋まった。少し低めの体温がロイドを優しく包む。クラトスに抱き締められたのだと気付くとロイドは体温が上がるのを感じた。
「ロイド…」
「な、なんだよ」
ロイドはクラトスの手を振り払うことも出来ず、クラトスの腕の中で固まっていた。そんなロイドを安心させるようにクラトスの手が優しく背中をさすった。子供扱いされているようで、ロイドは一瞬むっとするが、あやすような手の心地よさにほっと息をついた。その様子を見ていたクラトスは柔らかく目尻をさげた。ロイドはうつ向いてしまっているためクラトスの表情を見ることはできなかったが、彼は今いままで誰も見たことがないような優しい顔をしていた。いや、あるいは今は亡き妻アンナだけが見たことがあるような。
「愛している」
ロイドが驚きで顔を上げると男の優しいけれど熱っぽい目とぶつかった。
「…っ、それはっ!俺だって父さんのこと」
「息子としてではない、一人の人間としてだ。」
クラトスは畳み掛けるように言葉を重ねた。
「それって…?」
人の気持ちに鋭いのに恋愛方面ではまったくの鈍感になるロイドにクラトスは思わず苦笑をうかべた。そんなところすら愛しいと思ってしまう自分はなかなか末期なのだろう。
ちゅ
柔らかな感触がロイドの唇を掠めた。
「まだわからないか?」
すぐ近くにクラトスの顔がある。かっとロイドの顔が紅く染まった。
(クラトスにキスされた…!!)
じっと熱い視線を向けてくるクラトスに、ロイドは居たたまれなくなりふいと顔を背けようとするがクラトスの手がそれを許さない。背中に回されていたクラトスの手は今はロイドの顔を包み込むように頬に添えられていた。
「私を見てくれ。」
なおもじっと見つめられ耐えられなくなったロイドはクラトスの目を真っ直ぐに睨むとまくし立てた。
「…わかったから!そんなに見つめるなよ。あ、愛してるとかいきなり言われても俺、よくわかんねぇよ!」
そして、自分の顔を包む手をやんわりと掴み、降ろさせ自らクラトスに顔を近づけた。
ちゅ
「…でも、キスはいやじゃなかったぜ。」
そう言い照れたようににかっと笑うと、くるりと後ろを向き物凄いスピードで走り去っていった。
クラトスはと言うと、ロイドからの嬉しすぎる不意打ちにフリーズしていた。
あとがき
真面目に書きたいのかギャグなのか…(笑)
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